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うつし世は夢、夜の夢こそまこと

Stefano Battaglia / The River Of Anyder / ECM

d0157552_0182539.jpgStefano Battaglia / The River Of Anyder / ECM

Stefano Battaglia(p)
Salvatore Maiore(b)
Roberto Dani(ds)

リリース:2011.8





ユートピア、理想郷。
いつの時代でも、どこに住んでいようと、ユートピアを夢想し続けDNAにまで刻み込んでしまったヒトという生き物。
そんなユートピアを丹念に音にしたのがステファノ・バタッーリア(バタッリア)の「The River Of Anyder 」。


イタリア出身のピアニスト、ステファノ・バタッーリアの昨年リリース盤。
アルバムタイトル「アニドラス川」は、かなりリアルで"生"な理想的な国家像を描いた15世紀の作家・思想家・法律家だったトマス・モアの「ユートピア」に出てくる川名。今思えばヨーロッパ+ユートピアかな?悪名高きヘンリー8世への当てつけ?とも取れたような内容だった記憶。お金がない国ですが奴隷はいる。そこそこ働く。音楽も聴け、信仰、結婚の自由もある共産自由主義っぽい理想郷だったような記憶。


1曲目「Minas Tirith」 タイトルのミナス・ティリスはトールキンの小説に出てくるたぶん城郭都市(城壁都市)がテーマ。音数が少なく余韻や打楽器による空間描写がすごいけど、ぜんぜんグルーヴしない。けど音がめちゃイイ。続くアルバムタイトル曲「The River Of Anyder」 彼が奏でるアニドラス川には、色々な思いまでゆったり流れる大河になっていくような気配です。楽想はセンチメンタルな甘いコンポジション・頭の中のイメージが溢れてきてるようなイメージ。

ロベルト・ダニ(カナ?)のドラム、打楽器の解像度と空間的なセンスが良いなぁ、と思いクレジットを見るとエンジニアはステファノ・アメリオ。エンジニアがベタな音作りをしてしまうとバタッーリアの世界観は世俗的なものになってしまいそう。

3曲目「Ararat Dance 」
イランの詩人・ペルシャ語でコーランを創った、ジャラール・アル・ディーン・ルーミーの詩からインスパイアされた演奏(ライナー)。ディーン・ルーミーはまるで知りません。曲、演奏も中東を彷彿させるコンポジション。延々と繰り返し上下していくテーマは静かに堕ちてくトランス感。。根底にはアジアとヨーロッパ(ローマ時代?)の接点。バタッーリアのピアノ、特に執拗なまでの低弦が不気味。

4曲目 「Return To Bensalem」 は フラシスコ・ベイコンの「ニュー・アトランティス」に出てくるユートピアから。。5曲目「Nowhere Song」アルチュール・ランボーからの。


しかし、美音。

演奏の静謐さや3人のテンションもさることながら、小さなプラスティック盤にパンドラのような空間を圧しこめた、ステファノ・アメリオ達のマジックに驚きます。

・・・でも、聴き込んでいくと、ぢわーっと疲労感を憶えます。
現実の猥雑感とほど遠い世界。。


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6曲目「Sham-bha-lah」 ヒルデガルト・フォン・ビンゲンという千年前にいたシャーマン(女性)の曲らしい。。キワっぽい。「シャンバラ」はチベット語で『幸せの源に守られた』という意味を持ったりしているみたいです。宇宙的なみたいな。演奏自体はアルバムの中ではストーリーや前進力があって15分ほどの演奏ですが動きがあります。7曲目の「Bensalem」は4曲目の微アレンジ。テンポ、アタックも若干アップ。同じ?幻聴、、ループです。

8曲目の「Anagoor」ライナーにはありませんでしたが、ミラノ出身の作家が書いた不条理なユートピア「アナゴールの城壁」。
24年間、門の前で待ったけど入れない男。さっと来てチンケな門から入ったと言われる男。少ない音数でアナゴールの城壁を、不条理な世界を、描いているかどうかは未だわかりませんw

9曲目「Ararat Prayer 」3曲目のアレンジ。リピートですが、テンポが若干遅く、音数も少ない演奏。アラビックなベースソロが消えてます。ラスト「Anywhere Song」エピローグ、どこでもソング。




ステファノ・バタッーリアが描いた理想郷は、一見穏やかなウェーブに溢れ、個の役割や全体の方向性が明確で厳しい。非現実的なユートピア、かもしれません。

焼肉や豚骨ラーメン、オッソブーコやピッツォッケリとかはここで食べれそうにない世界。
・・・自分が住めるかどうかは疑問です。たまに遊びに行くと、気持ち良いかも知れない場所。




演奏曲
1. Minas Tirith
2. The River Of Anyder
3. Ararat Dance
4. Return To Bensalem
5. Nowhere Song
6. Sham-bha-lah
7. Bensalem
8. Anagoor
9. Ararat Prayer
10. Anywhere Song



関連youtube
Ararat Dance

by kuramae2010 | 2012-06-15 01:11 | jazz | Comments(2)
Commented by cahier-b at 2012-07-16 23:02
こんばんは。
3曲目「Ararat Dance 」
坦々としたテーマの繰り返しは子守唄のささやきのようでもあり、
低温の響きは胎動のようでもあり。
整った音の並びが時折見せる明るい展開とか変調とか、
ちょこちょこと遊びもあって1曲としては長く感じられますが、
色んな表情が見られて楽しめたりもしますね。
終盤のピアノのアレンジが好きです。
Commented by kuramae2010 at 2012-07-18 00:03
こんばんは。
バタッーリアというピアニスト、最近になって何枚か聴きました。
デビュー当時はノーマルなスタイルだったようですが、ここ10年程は偏執的なコンセプトが突出した作品が多いようです。

その多くはジャズ特有のものが欠落してますw 
欠落している替りに現実感がないクリアな世界、と思いきや
なんとも歪んだ感じです。