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うつし世は夢、夜の夢こそまこと

Ben Willams / State Of Art / Concord

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昨年末から3月にかけて仕入れた盤で「うつむき系ジャケ写」が多かった感覚があります。

ジャケットで俯いてなくても、サウンドが内向きでダークだったり、弾けずにつかみどころなく浮遊する感覚など、自身やその立ち位置を確認するような作業が、2000年代のニューヨークをコミュニティとした若きジャズマンに多いのかな、と感じてます。10代から20代の鋭く多感な時期に911やイラク戦争、カトリーナ、リーマンショックなど、アメリカが経験したいろんな危機。その揺れる社会から浮き彫りになった問題が其れなりに音楽の内面へも影響しているのかな?と妄想しつつ「うつむき系ジャケ写」の何枚かを聴きました。






真正面から、うつむいているアルバムのベン・ウィリアムス。


Ben Willams / State Of Art / Concord_d0157552_234208.pngBen Willams / State Of Art / Concord

Ben Williams (b)
Gerald Clayton (p,key)
Matthew Stevens (g)
Marcus Strickland (ts,ss)
Jamire Williams (ds)
Etienne Charles (per)



Jaleel Shaw (as,ss) 6,7,10
Christian Scott (tp) 3

リリース:2011.06.28



うつむき系21世紀ジャズ?の1枚目、2009年セロニアス・モンク・コンペティション、ベース優勝者のベン・ウィリアムスのリーダーデビュー盤です。
「Moontrane」や「Little Susie」「Things Don't Exist」などのアレンジ、「Dawn of a New Day 」などオリジナル曲がいい感じで素人耳でもベン・ウィリアムスの"コンポジション力"には卓越した才能を感じます。



ファースト・インプレッション

2曲目「Moontrane」オリジナル以外ではこれが一番好きな演奏。 選曲もいいし、サウンドもカッコいい。漂う世界観がいいです。
3曲目は一気にラップに振れます、The Lee Morgan Story 「リーモーガン物語」というジョン・ロビンソンがラップするヒップホップで、クリスチャン・スコット参加。原曲は 2010.4月リリースのJ.Rawls & John Robinson / The 1960's Jazz Revolution Again Instrumentals 「1960年代のジャズの革命、再び」でも演奏。ジョン・ロビンソンのアルバムはヒップ・ホップだけどかなりクール。J.Rawls はアルバム The essence of soul「魂の本質」 などをリリース。ある種の原点回帰なのかな?

「The Lee Morgan Story」 この曲は、リー・モーガンの非業の死や記憶されるべき功績、後に続くコルトレーンやショーター、ドルフィー、そして時代を歌っているようです(聴き取り難い)。この曲だけに参加しているクリスチャン・スコットはかつてカトリーナを堺に自国の陰やジャズの歴史、自分の意味を問いかけたりしました。ロバート・グラスパーもサウンドで表現したりしてます。


生まれてもいない日本人の僕には、
「1960年代のアメリカ」の時代の空気が今一つわかりませんが、2010年代の彼らにとって一つのカギな感じ。ブラック・ミュージックやブラックパワーといったブラック・アメリカンのアイデンティティを確立していったダイナミズムを想起させるようなメッセージ。。

「Moontrane」とセットみたいな意味合いがありそうです。もろラップは唐突感ありかな。。



4曲目の「Dawn of a New Day」 はジェラルド・クレイトンのソロなども活きていていいコンポジション。
6曲目マイケル・ジャクソン「Little Susie」ストリングスが入ります。ジャリル・ショウの泣きが入るアルト(たぶん)とかアンニュイな曲想とピッタリ。
7曲目「November」でようやくスピード感あるオリジナルのコンテンポラリーなジャズじゃないかと思われます。後半、ビル・スチュワートのチャカポコいくリズムと浮遊するジェラルド・クレイトンがさり気なく決まってます。
8曲目はスティービー・ワンダーのヒット曲、9曲目の「Things Don't Exist」弦楽四重奏が入ります。



ここまでアレンジ、構成が凝っていると、、、カタログ的要素やこれまで影響を受けた
音楽を目一杯詰め込んだ感じになってきてる感じ。ぎゃくに次作のアプローチ、出来が楽しみです。

10曲目がファンキーな50年代を彷彿とするオリジナル曲「Mr. Dynamite 」。
ラスト曲が「Moonlight in Vermont 」ジョン・ブラックバーンとカール・スースドルフが第二次大戦中につくったスタンダードでElla Fitzgerald & Louis Armstrong - Moonlight In Vermont  が有名なんでしょうかね。


今のコンテンポラリーからラップ、ポップス、戦後のスタンダードまで網羅した
てんこ盛りなベン・ウィリアムス。サウンドは俯いてませんが過去への敬意が其処彼処に込められてます。




演奏曲
1.Home (Williams)
2.Moontrane (Shaw)
3.The Lee Morgan Story (Robinson)
4.Dawn of a New Day (Williams)
5.Little Susie (Intro) (Williams)
6.Little Susie (Jackson)
7.November (Williams)
8.Part-Time Lover (Wonder)
9.Things Don't Exist (Bhasker, Goapele)
10 Mr. Dynamite (Williams)
11.Moonlight in Vermont (Blackburn, Suessdorf)
by kuramae2010 | 2012-03-21 00:38 | jazz