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うつし世は夢、夜の夢こそまこと

Bill Evans 

Bill Evans _d0157552_22313245.jpgyoutubeにあった1970年フィンランドTV局のインタビューを受け

演奏をする白人ピアニストは、

襟が斜めに曲がりジャケットから一方が出て、

前歯が抜け落ちた神経質そうな姿でピアノと向き合う。


一瞬、ジョニー・デップが演技してんのかと思う印象。。。



Bill Evans Trio - Nardis



エンリコ・イントラのCDに入っていたNardisを聴き、久しぶりにビル・エバンスを聴き返しました。マイルスなどと並ぶドメジャーなので、JAZZを聴く人なら1枚は買ってしまい好きになるか、嫌いになるかはっきりするピアニストかもしれません。

ビル・エバンスの出発点は6歳からはじめたピアノ。音大時代にはドビュッシーやハチャトリアン、スクリャービンを学び、卒業時は名誉学生にも選ばれた前途洋々の青年だったらしい。プロデビューはなんと13歳。。ベートヴェンの難曲も速攻でものにした天才肌だったそうだ。1970年に残されたインタビューでは「分析が得意で、本質を見ること、基本を知ることが重要・・・そして努力するプロセスを面白いと思えるように発想を転換した」と語っていた。夜はJAZZクラブ活動が盛んでアイドルはバド・パウエルだったと言われています。1956年録音の「枯葉」の演奏、晩年近くの演奏でも影響度があったように感じます。

ビル・エバンスがメジャーになるきっかけはジョージラッセルのグループにいた時で、マイルスのチェックが入り紹介された頃。発売時から今まで世界で1億枚セールスしたと言われる、ドメジャー盤「kind of blue」に参加した当時、マイルスのレギュラーグループのピアニストはレッド・ガーランドかウイントン・ケリーだったと思いますが、Kind of blueでは2曲目がウイントン・ケリーのみで後はビル・エバンスが参加。


特に「Blue in Green」と「Flamenco scketches」ではジョン・コルトレーンもキャノンボール・アダレイにしてもこの世界観にハマっていない雰囲気で、その分マイルスのミュートが浮き上がった演出すら感じてしまう。一方、ビル・エバンスは、ピンチヒッターだけあって、kind of Blueの世界観ではドンピシャな演奏を展開します。

なぜ、ビル・エバンスだけが表現できたんだろう?
その理由は3つ考えられます。たぶんにビル・エバンスが多感な時期にクラシックの和声、特に先にあげたドビュッシーの「モード」を吸収しJAZZへと変換できたこと。2つ目にビバップ、ハードバップにおけるコードの極限的な分解~再構築などの過程を俯瞰し、体得できたため。パウエルやパーカーを研究(たぶん、晩年期にも)。3つ目はマイルスが "知った" リディアン・クロマティック理論を演奏として、表現できていたからじゃないかと思います。マイルスはこれだ!!と感じたのかもしれませんが、理論構築は不得意だったのかもしれない。JAZZにおけるモード理論構築はジョージ・ラッセルの仕事かもしれませんが、最小ユニットでの実演・優れた表現、解釈はビル・エバンスが成し得たとも言えるかも知れません。この点が他のサイドマンとの根本的なちがいです。

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「Blue in green」は旋法主体というより、コードチェンジによる曲(そんな感じを受ける、テンションありの変な区切り?)だと思いますが、より移動間の希薄なトーンはマイルス以上。ビル・エバンスのバッキングとちょっと歪んだような和声。。。この曲・演奏に関してはピアノトリオとマイルスだけの方が純度が上がったのではと思ったりします。少し歪んだように感じるビル・エバンスの音(半音階フレーズ?)は、後のリーダー作でも頻繁に登場します。
※実質、Blue in Greenはすべてビル・エバンスの作曲だと思います。マイルスは「こんな曲にしてほしいよ云々」的な伝達で。

「Flamenco scketches」この曲もピアノが光ってます。これもビル・エバンスの作曲だと思いますが・・・音数の少なさで空間を描いていく、墨汁をにじませていく感じはマイルスとビル・エバンスだけ。。日本の墨絵を比喩にしたライナーノーツは有名です。サックスをなぜ音量を大きくして収録したか、、、この意図は不明と感じてしまいますが、現実感もしくは既定路線に戻る瞬間かもしれません(セールスのためか)。後にコルトレーンもこの理論体系を会得し、ハードな練習と独自のコード理論で後世まで影響を残していきます。

「So what」で残されてる映像では、コルトレーンのソロがはじまった時、ポーズなのかマイルスは興味なそうに煙草を喫いながら誰かと話してるしw マイルスは自らの音が活きるスタイルの模索として、バップの呪縛から抜け出し、新しい響きを確立する意欲的な作品(後に失敗作と言及)で、一番嵌っていたビル・エバンスを収録後、そっこーで解雇します。自身で辞めたのかもしれませんが、肌の色や何やらあったのかもしれません。


当時のビル・エバンスのどーしようもないドラッグ漬けが理由かもしれない。

パーカーに負けないくらいデタラメに破綻し、路上生活もアリな状態でギャラはほとんどドラッグに消え、
右手が腫れて使えなとか、指の震えとかかなりの破天荒ぶりで、
残された音源のイメージとはかけ離れています。


バド・パウエルに憧れ、当時の現代音楽への造詣も深い、
ドラッグ漬けの痩せた白人ピアニスト。

kind of blue の収録後、自身のトリオでより進化・深化させる方向へと進みます。








ビル・エバンス-インプロビゼーション・コンセプト
Dan Papirany氏によるビルエバンスの即興演奏概念を日本語訳したものです(ビル・エバンス研究室より)
B.クローマティック(半音階)フレーズ
エバンスは、早い頃から半音階を実験している。これはビバッププレイヤーがよく使っていたものだ。これらのフレーズは定期的にエバンスの演奏に登場し、70年代初頭まで発展し続けた。RE:PERSON I KNEW、BLUE IN GREEN、SINCE WE METなどのアルバムを聴くとこれら半音階フレーズが見られる。実験のとき、エバンスはこの半音階だけに専念していたわけではなく、通常のフレーズに取り込むことで最終的に更にカラフルな即興演奏へと発展させた。EX5では、中範囲にわたるインターバルから小範囲な半音階インターバルへと続く典型的なリックを示している。1小節目の1~2拍目はFm7のアルペジオ(3度で構成)、4拍目と2小節目の1拍目はCからBbへの半音階下降である。

ハーモニックアプローチ(和声への取組み)
エバンスのハーモニーは、他のミュージシャンに比べてとても高度である。彼はドビュッシーやラフマニノフ、ジャズではバドパウエル、チャーリーパーカー、ジョージシアリング等の影響を受けているが、管楽器のような即興演奏メロディでの影響はバドパウエルにある。ハーモニー(和声)ではジョージシアリング(ブロックコード)やジョージラッセル(モード奏法)の影響が見られる。マリアンマックパートランドのインタビューで、エバンスは偉大なジャズ演奏家すべてが影響したと断言している。エバンスの和音への取組みはクラシックとアメリカのポピュラーミュージックに起源する。1956年、彼がジャズシーンに初めて現れたときに見せた和声への取組みはとても新鮮なもので、既に自作の曲は和声的にとても高度だった。ある曲のコード進行が簡単なものである場合に、彼は自分の好みに合わせて変化させた。エバンスが2音ボイシング(発音)を使う場合のメインは3度と7度であり、モダンジャズやビバップの演奏者にこの取組みは非常に有名である。以下の例は2通りの2音ボイシングをCメジャーキーで示す。EX2aの最初と最後の和音は(ルート(根音)を除いて)3度を低い位置においている。 ビル・エバンス-インプロビゼーション・コンセプト




Maurice Ravel / L'oeuvre Pour Piano
マイルスが、モードを作り上げるときに、ビル・エヴァンスをとても重用したのが、この点です。マイルスが求めていたのは、ドビュッシーやラヴェルのような、ルートがはっきりしない、浮遊感がある、しかし曲全体を統括するものが明快な音楽だったといわれています。
 特にビル・エヴァンスはその点を表現するのに長けていたのでしょう。名盤「Kind Of Blue」では、すでにマイルス・バンドのレギュラー・ピアニストがウィントン・ケリーであるのに、録音時にビル・エヴァンスを使用しています。 (中略)
 ラヴェルは、ジャズに高い関心を持っていたようです。今回取り上げたアルバムには収録されていないですが、「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」という曲があり、この曲の第1楽章は、曲のキーに関して少々面白いつくりをしています。ピアノの楽譜はAフラット・メジャー、しかし、ヴァイオリンの楽譜は G・メジャーとしてあり、ヴァイオリンがピアノに対して、半音下で鳴るように設定されています。
 ピアノとヴァイオリンが対等の立場で演奏されるように作ってありますが、ヴァイオリン + ピアノという編成上、どうしてもヴァイオリンが際立ちます。思い切って、ピアノ側がヴァイオリンのバックであると考えると、ヴァイオリンの方が明らかに半音下がって聴こえるわけです。ジャズのブルーノートに近い効果を狙った曲であるのが明確です。
 実際、第2楽章は「ブルース」という名前がついています。 (略)
JAZZピアニスト 手島 慎一郎氏のサイトから。




Bill Evans _d0157552_1183066.jpg

by kuramae2010 | 2011-05-29 00:04 | jazz